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ロースクールの教員に就任しました

本年4月から,東京大学法科大学院(ロースクール)の実務家教員(客員教授)として,法曹を目指す学生の指導にあたっています。春から夏にかけての現在は裁判官・検察官の教員とともに3年生の模擬裁判の指導をしており,秋から冬には2年生に対する刑事実務基礎の授業を担当する予定です。2015年から2018年にかけて司法研修所の刑事弁護教官をつとめた私にとっては2度目の「教壇」になります。
司法研修所では司法試験に合格してこれから実務に出る司法修習生を教えていたのに対し,ロースクールでは司法試験の合格を目指す学生を教えるという違いはあります。ただ,現役の弁護士でもある私に期待されているのが,刑事裁判の「今」を踏まえた実践的な弁護活動の教育であるという点は共通しています。したがって(研修所教官時代にも心がけていたことではありますが),ロースクールで充実した授業をするためには,普段の業務の中で充実した弁護活動をしなければなりません。これは「授業に活かすため弁護活動に力を注げば授業の準備にあてる時間が奪われる」いう実に悩ましい事態を招くのですが,見方を変えれば「普段の弁護活動に力を注ぐことが最上の授業の準備になる」ともいえます。また,思いどおりに行かなかった弁護活動は,普段なら嫌な思い出として忘れ去るか,せいぜい弁護士仲間での愚痴のネタにするしかありませんが,ロースクールの教員でもある私には,学生たちが弁護士になった時に同じ轍を踏まないための貴重な教育の素材となります。そして何より,後進の指導のために自分の失敗を省みることは,私自身の知識,能力,技術の向上にとって極めて有益な作業です。
だからといって,あえて失敗をするつもりなど無く,学生たちが刑事弁護の仕事に憧れを持ったり,やりがいを見出したりできるような成果を挙げたいと考えていることは言うまでもありません。日々担当する刑事弁護の業務とロースクールでの教育とが互いに相乗効果を発揮して,それぞれに質の高いものとなるよう努力を続けていきたいと思います。